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広島高等裁判所岡山支部 昭和31年(ネ)102号 判決

控訴人 有岡暉一

被控訴人 小林広

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取り消す。本件当事者間の岡山地方裁判所津山支部昭和三一年(ヨ)第二五号仮処分命令申請事件につき同裁判所が昭和三十一年五月十六日した仮処分命令を認可する。手続費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張および立証は、

(甲)、控訴代理人において、

仮に競落人が被控訴人であるとするも、被控訴人は鷲田繁一を代理人として競買の申出をしたのであつて、その代理権は競落を許可された不動産(原判決添附第一目録記載)中宅地と建物一棟だけのことであるから、右鷲田が他の建物二棟についてした競買の申出は被控訴人に効力を及ぼさず、この様な場合には右不動産につき一括してした競落許可決定は被控訴人に対し効力がないものというべきである。

と述べた。〈立証省略〉

(乙)、被控訴代理人において、

前記不動産中木造かわらぶき平家建居宅一棟建坪七坪は風害に因り倒壊したが、他の建物は現存する。

と述べた。〈立証省略〉

理由

本件は任意競売による不動産競落許可決定に基く不動産引渡命令(競売法第三十二条民事訴訟法第六百八十七条)の執行を、競落許可決定が無効であることを理由に、本案たる競売無効確認事件の判決が確定するまで停止すべきことの仮処分命令を求める事案である。

しかし法律が裁判の執行停止に関して規定を設けてある場合にはその規定によつてのみこれを停止し得べく、仮処分等その他の方法によることを得ないものと解すべきところ、右不動産引渡命令に対しては不服申立の方法として民事訴訟法第五百四十四条第一項の強制執行の方法に対する異議の申立によるか、または同法第五百五十八条の即時抗告によるかはともかくとして、右のうちいずれの方法によるとしても、執行停止の仮の処分に関する規定(同法第五百四十四条第一項、第四百十八条第二項)があるのだから、これによつてその執行の停止の手段を講ずるは格別、仮処分によつてその執行停止をすることはできない。このことは抵当債権不存在確認訴訟を本案訴訟として、競売手続停止の仮処分を求めうることと矛盾するものではない。この場合には、強制執行と異り債務名義がないのであるから請求異議の訴によることができないとされているからである。

これを要するに控訴人の本件仮処分命令の申請は不適法であつて却下を免れず、したがつて原判決が原審でさきにした仮処分命令を取り消し、本件申請を却下したのは結局相当であつて、本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 三宅芳郎 高橋雄一 菅納新太郎)

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